TEL06-6976-6194

受付時間9:00〜17:00(土日祝休み)

お問い合わせ
TOP > 杉浦 勝昭 > 13-004. 「プラチナデータ」 大失望!

会長ブログ

13-004. 「プラチナデータ」 大失望!

13-004. 「プラチplatinadataナデータ」 大失望!

 ちょっとあまり勝手なことを書いてしまったのでいろいろ反論・反感をかうことがあるかもしれませんが・・・
(普段は好きなものとか良いものについてはお薦めを書きますが、気に入らないときは無視するのが一番だと思っていますが、この作者にはこれからも頑張って欲しいという期待を込めて・・・)

 久しぶりに東野圭吾を読んでみようと買いました。
幻冬舎文庫というのも面白い本を出版するし、映画が公開されるというので、
その前に原作を読んでおきたかったのです。
(映画化されるときは原作を読んでから見ることが多いです。)
内容も国家レベルでの情報管理と犯罪絡みで、興味津津、期待わくわくでした。

 まったく残念ながら期待は無残にも裏切られました。
100万部突破ということが信じられません。
新鮮で豊富な食材が目の前にあるのに、野菜炒め定食か餃子定食を食べさせられたような感じです。

 取ってつけたようなご都合主義のストーリー展開です。
小説全部をひっくり返しても出てくるのは二重人格という種明かしだけ。
この小説の一番大きな存在、主人公の「プラチナデータ」(ゴールデンよりももっと圧倒的なデータ構築)の利用・支配という問題の認識が恐ろしく希薄で、作家としての感度を疑います。
東野という作家はもっともっと鋭い感覚を持った作家ではなかったのかと残念です。

 このテーマでは、システム開発側からの視点でミステリー仕掛けにすることもできたでしょうし、犯人逮捕へ頭脳を使う警察側から描くこともできたでしょうし、データ管理する国家公安側から見ることもできたように思います。
それがみんなごっちゃになってお話の展開としても面白くなくなっています。

 その基本は、このようなデータ管理による社会の全体主義的動向に対する恐れが希薄だからだと思います。
社会が管理されないといけないのは当然でそのためのシステム作りは必要なのですが、
個人の自由への束縛になる可能性があることは常に意識しないといけないでしょう。
中国だけでなく、アメリカにおいても存在する危険性です。

 このような管理体制の危険性は昔から指摘されていて、
一番有名なのは「1984年」という小説でしょう。
これは村上春樹の「1Q84」とはまったく違うもので、
社会や国家の全体主義的管理体制に対する実際の恐れが小説の細部にわたって感じられます。
それに反して村上春樹の小説においては
あたかもファッションのように軽やかな旋律に乗せられ
そのような雰囲気だけが漂い、
ショーウインドーの中を飾っています。

 このような現代社会・現代文明・現代国家が内包している危険性を敏感に感じて小説にしているのが、伊坂幸太郎ではないかと独断と偏見で考えています。
現代の危険性に肉体を接してその体温・肉感をさまざまなエピソードを通じて読者に伝えようとする試みのように思えます。

 東野圭吾の「プラチナデータ」小説から話が大きくそれました。
勝手な独りよがりの文章になりました。
きっと映画は面白いでしょう。
期待しています。

最近投稿された記事

カテゴリー

月別アーカイブ