10-051. 「プライド」 真山仁
2010.05.23
10-051. 「プライド」 真山仁
「ハゲタカ」で有名になりすぎてしまったので、変な風に変わってしまわないかと心配したが、
どうも危惧だったようで、3月発行の「プライド」も今まで同様真摯な綿密な作品で、充実した読書感を持つことができた。
それぞれ異なった産業界を取り扱った6篇は、事業仕分けの対象となる農業・米作り、仁術でなくなった医学界、蚕から自然崇拝の心を守ろうと独自の生き方を求める女性遺伝子学者、プリンの製造にかかわる機械的で矛盾した制度と企業の対応、アメリカのインテリジェンスに翻弄される老いたる日本の政治家の純愛、農薬により死にいたるミツバチに露わにされる組織の対応の矛盾など、いろんな切り口から問題点を指摘する。
小説として、読み物として読みながら、その描かれた現実に義憤を感じていると、
あとがきとして、「心にプライドを持て!」という文章を読むことになる。
引用したいという誘惑に打ち勝つことはできない:
己の生き方に矜持があれば、どんなことでも乗り越えられるー。
常々私はそう思ってきた。なぜならば、最後の最後に自分を支えるのは、己を信じる力だからだ。
・・・
景気が良くなって元気になるのは、法人という得体のしれない生き物のみで、そこで働く人たちの暮らしへの関心は年々薄れてゆくばかりだ。
何のために人は働くのか。そして、どうすれば矜持を守ることができるのか。
それを守るために、どのくらいの犠牲に堪えられるのか。
あるいは、犠牲を払ってまで守るプライドとは何なのかー。
長い引用になりましたが、
どの業界で働いていても「プライド」をもって仕事に従事していきたい。
また「暮らしへの関心」「何のために働くのか」「どのように矜持を守ればよいのか」など
忘れてはならない観点である。
「ベイジン」「レッドゾーン」の最近作まで現代社会・企業を理解するには非常に有益・役立つ必読書といえる。